10/18 国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針(案)

Category - 最近のニュースから 作成者:友弘 克幸

10月18日に開かれた「日本経済再生本部」で、

「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針(案) 」

という資料が配布されたそうです(→こちら)。

「雇用」の部分の記載は次の通りですが、それぞれ突っ込みどころ満載です。

◇ 特区内で、新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、優秀な

人材を確保し、従業員が意欲と能力を発揮できるよう、以下の規制改
革を認めるとともに、臨時国会に提出する特区関連法案の中に必要な
規定を盛り込む。

(1) 雇用条件の明確化
・ 新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、我が国の雇用
ルールを的確に理解し、予見可能性を高めることにより、紛争を生
じることなく事業展開することが容易となるよう、「雇用労働相談セ
ンター(仮称)」を設置する。

→日本には、私のように専ら労働者側で事件を手がける弁護士と、逆に、専ら使用者側で事件を手がける弁護士(経営法曹と呼ばれます)がいます。

グローバル企業なら、そういう経営法曹を顧問にすれば良いだけの話で、実際、大部分の企業はそうしているでしょう。

国が、企業向けに相談センターなど設置する必要などありません。

・ また、裁判例の分析・類型化による「雇用ガイドライン」を活用し、
個別労働関係紛争の未然防止、予見可能性の向上を図る。

→解雇権濫用法理を含む我が国の雇用ルールについても、経営法曹の先生方が、多くの著書を出版されています。

一部におかしな本もあるようですが、大部分はこれまでの裁判例を踏まえて的確な整理がなされていると言ってよいでしょう。

また、多くの労働法学者の先生も、分かりやすく日本の雇用ルールを解説した、優れた著書を出版されています。

わざわざ国が税金を使って、今さら「裁判例の分析・類型化」をする必要など全くありません。はっきり言って、税金の無駄です。

・ 本センターは、特区毎に設置する統合推進本部の下に置くものと
し、本センターでは、新規開業直後の企業及びグローバル企業の
投資判断等に資するため、企業からの要請に応じ、雇用管理や労
働契約事項が上記ガイドラインに沿っているかどうかなど、具体的
事例に即した相談、助言サービスを事前段階から実施する。

→ これも、経営法曹の先生方にお任せすればよい話です。

(2) 有期雇用の特例

・ 例えば、これからオリンピックまでのプロジェクトを実施する企業
が、7年間限定で更新する代わりに無期転換権を発生させることな
く高い待遇を提示し優秀な人材を集めることは、現行制度上はでき
ない。

→ 意味不明です。7年間のプロジェクトなら、労働基準法14条1項に基づいて、「期間7年の雇用契約」を結べばよいだけの話です。現行制度のもとでも、優秀な人材が集まるでしょう。

そもそも、7年間のプロジェクトと分かっているのに、あえて1年おきに細切れの契約を結ぶなどというのは、「使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」とする労働契約法17条2項にも反しているのではないでしょうか。

・ したがって、新規開業直後の企業やグローバル企業をはじめとする企業等の中で重要かつ時限的な事業に従事している有期労働者であって、「高度な専門的知識等を有している者」で「比較的高収入を得ている者」などを対象に、無期転換申込権発生までの期間の在り方、その際に労働契約が適切に行われるための必要な措置等について、全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討を行い、その結果を踏まえ、平成26年通常国会に所要の法案を提出する。

→ 7年のプロジェクトに参画するのに、あえて1年ごとの細切れ雇用を望む「高度な専門的知識等を有している、比較的高収入の労働者」って誰なんでしょうか。

これについても、濱口桂一郎先生が、ブログで「ごもっとも」な指摘をされています。