10/3 「不当労働行為」=「不当解雇」???

Category - 未分類 作成者:友弘 克幸

安倍内閣が導入を目指すという、「解雇特区」の問題。

9月20日に開かれた、「産業競争力会議 課題別会合(第1回)」で、「国家戦略特区ワーキンググループ」の八田達夫座長が提出した

「国家戦略特区WG 規制改革提案に関する現時点での検討状況 」

という文書のお話。(→官邸のホームページに公表されています。「配布資料5」です)

その中に、次のようなくだりがあります。

〔規制改革提案〕

(2)特区内の一定の事業所(外国人比率の高い事業所、または、開業5年以
内など)を対象に、契約書面により、解雇ルールの明確化

<厚労省>

・契約書面で解雇要件等を明確にすることは奨励している。ただ、裁判になったときは、その後の人事管理・労務管理などを含め、総合判断せざるを無い。(契約書面は、労使双方にとって有効でない)

※「せざるをえない」の誤記と思われます(友弘注)。

〔WGの見解〕

・「総合判断」という限り、労使双方にとって予測可能性が担保されない。
・書面で明確にすることが、労使双方にとってプラスのはず。
不当労働行為や契約強要・不履行などに対する監視機能強化を特区内で行
うなら、検討可能

 

最初に読んだとき、「?」と思いました。

というのは、「監視機能強化」を行う機関というのは、おそらく労働基準監督署か労働局を指しているのだろうと推測されるものの、そういった機関が、「不当労働行為」についての「監視」をするというのはどう考えてもヘンだからです。

「不当労働行為」というのは、労働組合法7条において、「使用者はこういうことをしてはいけませんよ」と定められている行為のことです。

具体的には、

労働組合員であることや組合に加入したこと等を理由に解雇その他の不利益な取り扱いをすること(不利益取り扱い)、

労働組合からの団体交渉申入れを正当な理由なく拒否すること(団交拒否)、

それに、労働組合に打撃を与え、その弱体化を図るような行為(支配介入)、

などを指しています。

労働基準監督署は労働基準法や労働安全衛生法などに違反した使用者の行為を取り締まる権限はありますが、このような「不当労働行為」を取り締まる権限はありません。

したがって、不当労働行為を受けた場合、不利益を受けた労働者や労働組合は、(「労働委員会」という行政機関に救済を求めることができますが)、労基署に駆け込むことはありません。(もちろん、不当労働行為の問題とは別に、割増賃金不払いなどの労働基準法違反があれば別ですが)

だから、「不当労働行為に関する監視強化を特区内で行う」というのはいったいどういうことなのか?と思って、頭の中が「?」でいっぱいになっていました。

ところが、その後、ツイッターで、朝日新聞の沢路記者による以下のツイートを見て、やっとその謎が解けました。

(以下、沢路記者の10月2日のツイート)

今日の午前中は、民主党の厚生労働部門会議がありました。マスコミフルオープンで、雇用問題がテーマ。議論は、国家戦略特区の雇用部分、〝解雇特区〟に集中しました。出席者は厚労省、規制改革会議、内閣官房、連合などの担当者でした。

続き)労働契約法16条に特例をもうけることについて、内閣官房の担当者は「外資系企業には、解雇ルールがわかりにくいという意見がある。裁判にならないと不当労働行為になるかどうか、わからない」と狙いを説明しました。

続き)「不当労働行為」の使い方がおかしかったので、連合側が質問しました。しかし、内閣官房の方は繰り返し、「解雇したとしても不当労働行為になるか、ならないかがわからない。裁判までいかないとわからない」と説明。確かに、特区WGのペーパーにも「不当労働行為」と書いてありますが・・・。

その後、連合側が「不当労働行為とはどういうことですか?」と厚労省側出席者に皮肉っぽく質問厚労省側は「労働組合法7条によって規定されているものと承知しております」

どうも「不当解雇」の意味で使いたかったみたいです。でも「裁判にならないと不当解雇かどうかわからないのは困る」っていう理屈も?

 

・・・・なるほど。八田達夫氏のレジュメにある「不当労働行為」というのは、「不当解雇」のことを指していたのか・・・。

しかし、「不当解雇」というのは、要するに裁判所で「解雇権の濫用(労働契約法16条、民法1条3項)なので、有効な解雇とは認められませんよ」と判断されてしまうような「不当な解雇」のことで、労働組合法7条の「不当労働行為」とは全く別の概念です。

ここからわかったことは、八田氏は、大学の「労働法」の講義の冒頭で習うような基礎知識も持っていないのに、労働法制について、「有識者」として政府の会議であれこれ提案をしているということです。

これって、「ゆで卵の作り方を知らない人が料理本を書く」みたいな感じでしょうか。

いやいや、それなら「できた料理がまずい」くらいで済みますが、被害の甚大さを考えれば、「動脈と静脈の違いを知らない人が心臓手術の方法についての解説書を書いている」くらいのヤバい状況でしょう。

濱口桂一郎さんが「労働法の入門書の一番基本のイロハのイのレベルの知識もないお方のようです」と書いておられましたが(ブログ)、決して誇張ではないです。

ちなみに、仮に「不当解雇」であったとしても、それをどうやって労働基準監督署が監督するねん?という突っ込みも、やっぱり入ってしまうのですが・・・。

★10/5補足

日弁連が、会長声明を出しました。→こちら