2013/07/26 今朝の日経新聞報道について

Category - 最近のニュースから 作成者:友弘 克幸

★今朝の日経新聞の1面に、

「雇用規制 特区で緩和 解雇・残業柔軟に 政府検討」

という見出しの記事が掲載されているのを読んで、ひっくり返りそうになりました。

政府が、「国家戦略特区」を「活用」して、

企業が従業員に再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」の導入
有期契約の無期転換制度(労働契約法18条)の規制緩和、
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入

を画策しているというのです。

★いつからこんな議論をしていたのか、と思って調べたところ、

5月から、こっそり布石を打っていたようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXDASFS2403J_U3A520C1MM8001/

そして、世間の関心が参院選に向かっている7月に、どさくさにまぎれて「国家戦略特区ワーキンググループ」で「有識者等からの集中ヒアリング」を実施したようです。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_y/

注目すべきなのは、7月17日の大内伸哉教授(神戸大学)の配付資料です。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_y/ouchi.pdf

ここでは、確かに「不当解雇に対する金銭解決の導入」が提案されています。

しかし、大内教授は「いわゆる事前型事前型(補償金を支払うと解雇できるという方式)は不可」と明確に記載されています。

また、大内教授は配付資料でホワイトカラーエグゼンプションの導入を提案されていますが、大内教授のご主張は、
長時間労働による健康障害は大きな問題ではあるが,現行の法規制は実効性に問題あり」という認識のもとに、「ホワイトカラーエグゼンプションの導入のいっぽうで、勤務間インターバル制度、休日労働の原則禁止による週休の確保など、休息の規制を重視すべきである」というものです。

(大内教授のご主張は、

 「君は雇用社会を生き延びられるか 職場の過労・うつ・パワハラに労働法が答える」(2011年、明石書店)

に詳しく述べられています。)

大内教授のご主張の是非それ自体についても、もちろん議論のあるところだと思いますが(私は「休息の確保をしっかりとするべきだ」とのご主張には賛同しますが、ホワイトカラーエグゼンプションの導入には反対です→こちら)、いずれにしても、教授のご主張は「規制を強化すべきところは強化し、規制を緩和すべきところは緩和する」というものなのです。

ところが、今回の報道だと、経営側に都合の悪い「規制の強化」の提案については、完全に無視された格好になっています。

★また、報道によれば政府は労働契約法18条の規制緩和を検討しているそうですが、そもそも労働契約法18条(有期労働契約の無期契約への転換)制度は、2013年4月1日に施行になったばかりなのです。

そして、労働契約法18条については、附則第3条で、「法施行後8年を経過した時点について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とちゃんと定められているのです。

施行後わずか3か月しか経っていないのに、なぜ今さっそく見直しという話になるのでしょうか。

(労働契約法の2013年改正については、厚生労働省のホームページをご覧下さい。

また、私も執筆に参加した、大阪労働者弁護団編「活用しよう 『改正』 労働契約法」もご参照いただければ幸いです。)

★そして、決定的に悪質だと思うのは、「特区」というネーミングです。

「特区」というと、なんだか、全国の中のごく一部の地域だけで実験的にやってみて、うまくいかなければ元に戻す、かのようなイメージを与えます。

しかし、今回の報道では、特区は「東京・大阪・愛知の三大都市圏を含めて」指定されるというのです。

しかも、全国展開する企業については特区内に本社があれば地方の支店も適用対象にすることも検討しているといいます。

ご承知のとおり、今や、大企業のほとんどは東京か、そうでなければ大阪・愛知の三大都市圏に本社を置いています。

要するに、今回の「特区」の指定の仕方だと、「特区」といいつつ、事実上、大部分の大企業に勤める労働者について、労働法の規制による保護を弱める効果を及ぼすことになるのです。

・・・いったい、安倍政権は誰のほうを向いて政治をしているのでしょうか。

★補足(7/29)

自殺・うつによる社会的損失について→こちら

★補足(8/1)

安倍政権のすすめる「雇用の規制緩和」については、日本弁護士連合会(日弁連)が反対する意見書を公表、政府に提出しています。

→ こちらもぜひご覧ください。