8/14 「プロフェッショナル労働制」なるもの

Category - 最近のニュースから 作成者:友弘 克幸

今朝(8月14日)の日経新聞1面に、こんな記事が出ています。

「課長級から勤務柔軟に 時間規制に特例、政府方針 年収800万円超 トヨタや三菱重に打診」

 政府は1日8時間、週40時間が上限となっている労働時間の規定に当てはまらない職種を新たにつくる方針だ。大企業で年収が800万円を超えるような課長級以上の社員が、仕事の繁閑に応じて柔軟な働き方をできるようにして、成果を出しやすくする。新たな勤務制度を2014年度から一部の企業に認める調整を始め、トヨタ自動車や三菱重工業などに導入を打診した。

ああ、また出てきました。

安倍政権は、2007年の第1次安倍内閣で、ホワイトカラー労働者の残業時間規制を解除するという「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入を目指したものの、世論から「残業代ゼロ法案」という激しい批判を受けて取り下げたという経緯があります。

それをこんどは「プロフェッショナル労働制」(仮称)と看板をかけかえて、また導入を目指そうというわけです。

葬っても葬ってもよみがえる、まるでゾンビですね。

★記事によれば、「新制度を導入すると、働く側は繁忙期に休日返上で働き、閑散期にはまとめて休むといった働き方を選べるようになる」と書いてありますが、呆れてものが言えません。

現在の制度でも、労働者には勤続年数に応じて有給休暇を取得する権利は法律上保障されていますが、現実の取得(消化)率は低いままです。

たとえば、厚生労働省の調査によると、

平成22年に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者1人平均17.9日、そのうち労働者が取得した日数は8.6日で、取得率は48.1%となっています。

従業員数1000人以上の大企業でも、取得率は55.3%にとどまっています。

少し古いデータですが、国土交通省・経済産業省の報告書(平成14年)では、有給休暇を取得しにくい理由として、42.1%の就労者が「休みのあいだ仕事を引き継いでくれる人がいないため」、38.6%が「仕事の量が多すぎて、休んでいる余裕がないため」と回答しています。

このような「年次有給休暇取得を妨げる構造要因」(報告書8頁)が何ら改善されないのに、「閑散期にまとめて休む」なんて、およそ不可能でしょう。

そもそも、ホワイトカラー労働者に「閑散期」なんてあるのか、という疑問もあります。

★それに、労働者、とりわけ年収800万円以上受け取っているような正社員であれば、仕事が忙しければ、休日返上で働いているでしょう。

こんなものは「労働者の生産性向上」(日経解説)どころか、「過労死促進法」そのものでしょう。

★補足(8/15)

東京新聞でも報道されていますね。こちら

厚労省幹部は「労基法は全ての事業者と労働者に適用され、特例を認めるのはなじまない。労働条件は労使が加わった審議会で議論するのが原則だ」としている、とのことです。

ここでいう「審議会」というのは、労働政策審議会(労政審)のことです。

厚労省のホームページには、以下の説明があります。

「労働現場のルールは、現場を熟知した当事者である労使が参加して決めることが重要となります。国際労働機関(ILO)の諸条約においても、雇用政策について、労使同数参加の審議会を通じて政策決定を行うべき旨が規定されるなど、数多くの分野で、公労使三者構成の原則をとるように規定されています。

そのために、労働分野の法律改正等については、労働政策審議会(公労使三者構成)における諮問・答申の手続が必要とされています。」

要するに、審議会で何の審議もしていない段階で、政府が企業に「こういう制度を導入するから、御社でも活用してください」などと働きかけるというのは、法の定める手続きを無視した違法行為だということです。

だいたい、ここでいう「政府」というのは一体誰なんでしょうか。少なくとも厚生労働省ではないはずですが。