8/27 自転車事故で加害者が無保険だと誤信して示談した場合

Category - 交通事故 作成者:髙橋 裕也

自動車事故では自賠責保険,任意保険からの確実な支払いが期待できるのに対し,自転車事故では加害者が無保険の場合が多く,示談交渉においても加害者の賠償能力を考慮し,不満足な金額での解決を余儀なくされる場合があります。

自転車事故による損害賠償責任については,個人賠償責任保険がカバーすることになるのですが,個人賠償責任保険はいろいろな保険に附帯されていたりするので,加害者が保険金の支払いを受けられることに気付いていないことも少なくありません。

自保ジャーナル№1900(2013年8月22日号)で紹介されている神戸地裁平成25年1月24日判決は,加害者が無保険であることを前提に,加害者が低額の賠償金を支払う内容の示談契約が締結されたところ,加害者の父親が契約している火災保険に個人賠償責任保険が附帯していることが判明したことから,示談契約の有効性が争われたという事件です。

裁判所は以下のとおり判断し,示談契約の錯誤無効を認めました。

「本件示談契約は,原告及び被告ともに,被告が保険に加入していない状態にあることを前提として締結したものであり,原告は,真実は保険会社からの確実な支払いが受けられるところ,これが受けられないものと誤信した点において動機の錯誤があり,本件示談契約の締結に当たってその動機は少なくとも黙示的に表示されたものと推認される。そして,本件示談契約の内容は,原告が提案したものとはいえ,休業損害や後遺障害の賠償を求めないなど,原告に不利益なものであり,被告が保険に加入していないということにつき錯誤がなければ,本件示談契約を締結しなかったであろうということができるから,要素の錯誤に該当するものと認められる。したがって,本件示談契約は錯誤により無効である。」

個人賠償責任保険は,自動車保険,火災保険,傷害保険だけでなく,クレジットカードに附帯していることもありますので,事故により他人を怪我させてしまった場合には十分に確認する必要があります。