読売新聞の影響力

Category - ブラック企業問題, 世界と日本の労働法 作成者:友弘 克幸

昨日(9月8日)の読売新聞の社説は、

ブラック企業 若者の使い捨ては許されない

というものでした。

24時間につき連続11時間以上の休息を社員にとらせることを企業に義務づけるEUのルール」を紹介したうえ、「EUなどの例も参考に、過度な長時間労働を抑える仕組み作りも、今後の課題だろう」と書いてくれているのは良いですね。

前にも書きましたが(こちら)、1回の就労と次の就労との間にインターバル(間隔)を置く、ということから「(勤務間)インターバル規制」と呼ばれていて、私は導入に賛成の立場です。

秋の臨時国会で、少しは議論になるでしょうか。

何だかんだ言っても、読売新聞のように発行部数の多い日刊紙の社説はインパクトがありますから、期待しています。

★9/10 補足 インターバル規制について

大内伸哉先生の「君は雇用社会を生き延びられるか」(明石書店、2011年10月)157頁以下によると、EUのルール、つまりEC指令(2003/88/EC)の規制は、以下のような内容なのだそうです。

1.1日(24時間)において、連続11時間以上の休息期間を付与すること

2.6時間を超える労働日につき休息時間を付与すること

3.7日ごとに、11時間の休息期間に加えて、連続24時間以上の週休を付与すること(14日ごとに連続24時間以上の週休を2度付与することでもよい)

4.1週間の労働時間について、時間外労働を含めて、(4か月以下の単位で)平均して週48時間以内の上限を設定すること

5.最低4週間の年次有給休暇を付与すること

 

2は日本の労基法34条1項とほぼ同じ内容と思われます。

3も、週休1日を原則とするという意味では35条1項と同じです。

5は、日本の場合(最大で20日間)と比べると日数がかなり多いですが、制度としては同じもののようです。

日本とだいぶ違うのは1と4です。

1のような規制(これが勤務間インターバル規制です)は日本の労基法にはありません。

4については、日本では労基法36条2項に基づいて厚生労働大臣が定める「労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年12月28日労働省告示154号、いわゆる限度基準)がこれに対応すると思われますが、限度基準ではカンタンに「例外」が認められて事実上、労働時間は青天井になってしまっているので、その意味ではこれも「日本の労基法にはない規制」と言えると思います。

実は、トラック・タクシー・バスなど自動車運転に従事する労働者については、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)というものがあり、そこで、「拘束時間と拘束時間との間には継続8時間以上の休息時間を置くべし」ということになっています。

しかし、これはあくまで「基準」に過ぎず法的拘束力もないので(労基法の条文ではないので、違反しても罰則が科されるわけではない)、EC指令と同じ意味での「規制」とは言えません。

★さらに補足

上で紹介した大内伸哉先生の「君は雇用社会を生き延びられるか 職場のうつ・過労・パワハラ問題に労働法が答える」(明石書店、2011年10月)ですが、とても良い本です。

働き盛りの夫を過労死で亡くした女性を主人公に据え、労災制度の内容、会社の安全配慮義務、日本の労働時間規制、さらには労働者の健康管理についての法規制(労働安全衛生法などなど)、メンタルヘルス問題、そしてパワハラなどについて、読みやすい文章で、非常に分かりやすく解説されています。

限られたページ数にもかかわらず、日本の労働時間規制の問題点や、政策提言(上のEC指令の紹介もその一環)までなされていて、参考になります。

読んでおいて損はない1冊です。