7/27 「コトラーが教えてくれたこと 2 ~女子大生が変えたブラック企業のマーケティング戦略」
西内啓さんの
「コトラーが教えてくれたこと 2 〜女子大生が変えたブラック企業のマーケティング戦略」(2012年、ぱる出版)
を読みました。
「近代マーケティングの父」 フィリップ・コトラー(1931年~)
が提唱する、「ソーシャルマーケティング」の考え方を一般向けに易しく説明した本です。
実は、私自身、「マーケティング」というと、顧客の好みを調査して、「どうやったら、より売れるか」を考えるだけの学問だと思っていました。
しかし、私の理解は間違っていました。決してそうではないのです。
日本でも、「企業の社会的責任」(CSR)という言葉は、すでに広く知られるようになってはいます。
しかし、これまではどうしても、「社会的責任をそれなりに果たしていないと(あるいは、果たしているように見えないと)、消費者から嫌われるから、渋々やっている」という消極的なイメージがつきまとっていたように感じます。
これに対して、この本で紹介されている「ソーシャルマーケティング」は、顧客・従業員・投資家、そして経営者自身が心からの「感動」を共有できるような
「社会にとって良いこと」
を目標に設定し、企業活動を通じてその「良いこと」の実現を目指すことが、究極的には企業の利益に繋がってゆく、という考え方です。
本書が優れているのは、こういったマーケティング手法を、単なる「理想論」ではなく、現実に適用可能な「合理的な戦略」であることを、実際の成功実例という最強のエビデンス(根拠)をあげて、説明しているところ。
さすが、かのベストセラー
の著者だけあって、読者は、このような戦略が合理的なものであるとする主張には、十分に根拠があるといやがおうにも思わされます。
とはいっても、本書は、私のようにマーケティングにあまり関心のなかった初心者にとってもとても読みやすい工夫がこらされています。
何年か前にベストセラーになった「もしドラ」と同様、「物語」を通じてコトラー理論を説明するというスタイルになっているからです。
【物語の内容】
舞台は、売上至上主義に走って原料産地偽装や消費期限偽装など、ブラックなことに手を染め、結局それが露呈して消費者の信頼を失ってしまった、という倒産寸前の老舗化粧品会社である。
主人公は、社長も専務も逃げ出したその会社に、事実上ただ一人残されて顧客からのクレーム対応や返品対応にあたる羽目になってしまった女性社員(主人公)。
信頼していた同僚は
「社長のセクハラもそうだけど、ガラクタを押し売りするだけの人生にもう耐えられなかったの」
と言い残して会社を去り、主人公は絶望のあまり、自殺すら考える。
そこへ現れたのが、大学でマーケティングを学んでいるという1人の女子大生。
主人公が絶望したその日から、インターン生として会社にやって来ていた彼女の本当の目的が、明らかになってゆく。
それまでの「ブラック企業」ぶりはマーケティングとしても、いかに間違ったものであったか。
本当に行うべき「マーケティング」とは、どのようなものであるか。
主人公は、自分よりずっと年下の女子大生やその友人らの力を借りて、コトラー理論に基づいた「正しいマーケティング」を行い、最後にはとうとう会社を見事に立ち直らせるのである。
主人公が見つけた、「化粧品会社が目指すべき、社会にとって良いこと」 とは何だったか?
そして、主人公たちはどのようにして、その「良いこと」を実現してゆくのか?
それが気になった方は、ぜひ手に取って読んでみてください。
「もしドラ」の次に来るのは、絶対にこの本だと思います。
というか、「来て欲しい」本です。