7/29 自殺・うつによる社会的損失
今日の朝日新聞に、
限界にっぽん 第4部 続「追い出し部屋」 3 という記事が出ていました。
朝日新聞が力を入れている、一連の「追い出し部屋」報道ですね。
★ところで、記事の中で、自殺やうつ病による「社会的損失」についての試算が紹介されていました。
実は私も今回の記事を読むまで知らなかったのですが、2010年に国立社会保障・人口問題研究所が、自殺やうつ病による「社会的損失」を以下のように試算した研究結果があるのだそうです(厚生労働省ホームページに掲載されています)。
1.自殺者が自殺せずに働き続けた場合に得られたはずの生涯所得(1兆9028億円)
2.うつ病で自殺した人と休業した人への労災補償給付(456億円)
3.うつ病で休業した人が働き続けた場合に得られたはずの所得(1094億円)
4.うつ病で失業した人への失業給付(187億円)
5.うつ病がきっかけで生活保護を受けている人の給付(3046億円)
6.うつ病にかかる医療費(2971億円)
・・・しめて、年間で約2.7兆円。
うつ病などによる自殺者は2009年までの10年間、年平均3.1万人以上に上りましたが、それがまったくいなかったと仮定すると、2010年の国内総生産(GDP)は、なんと
約1.7兆円も増えていたはず
だというのです。
現在、安倍政権は雇用の「規制緩和」と称して、労働者をより長時間、安価で使用できるようにするための制度変更をもくろんでいます(詳しくはこちらとこちらをご覧ください)。
しかし、仮に「成長戦略」の目標が経済成長、すなわち「GDPの増加」にあるとするならば(それを目標に据えること自体の問題はさておくとして)、
「過労死・過労自殺の防止」
「労働者にうつ病を発生させないような就労環境の整備」
こそ、有力な経済政策の一つと位置づけるべきでしょう。
★なお、過労死・過労自殺した労働者の遺族は、労災補償給付を受けることができますが、いわゆる「慰謝料」は支給されません。
労働者が生存している場合も同様です。
つまり、上記の「社会的損失」の中には、
過労死・過労自殺した労働者本人やその遺族の精神的損害(苦痛)
過労によりうつ病を発症した労働者やその家族の精神的損害(苦痛)
はまったくカウントされていないのです。
そのような精神的苦痛も、「社会にとっての損失」として正当に評価して計算し直せば、「社会的損失」はもっともっと大きな金額になることでしょう。