2013/6/13 「提訴しました」の舞台裏
友弘です。
今日から、裁判にまつわる、へぇ〜な話を紹介してゆこうと思います。
よく、テレビや新聞で、
「今日、○○の事件の被害者○○名が集団で、○○地裁に提訴しました」
というようなニュースを目にしませんか?
最近のものだと、6月10日のニュースで、
「MRIに出資金返還求め提訴 顧客9人、東京地裁に」
というニュースがありました。
で、ニュースを見ると、
「MRIに出資金返還を求める提訴のため東京地裁に向かう被害弁護団=10日午後」という写真がついていますよね。
この写真を見ると、
「提訴というのは、ずいぶん仰々しいものだな」
と思われるかもしれません。
が、実は・・・
こんなふうに提訴する事件は、すべての裁判の中で、おそらく1%もありません。
どういうことかといいますと、
提訴というのは、「訴状」という書類を裁判所に提出する手続きです。
「書類を出す」だけですから、たくさんの弁護士が代理人(弁護団)としてついていても、わざわざ弁護士全員が揃って出しに行く必要はないわけです。
もっと言うと、弁護士が自分で持って行く必要すらありません。
実は、弁護士が当事者の代理人として提訴する裁判の大部分は、法律事務所の事務員さんが裁判所まで訴状を持って行ったり、郵送で訴状を提出したりしています。
では何のために、あんな風に弁護士が揃って、ぞろぞろと裁判所に入ってゆくのかといえば、ずばり、
マスコミに報道してもらうため
です。
公害や労災、組織的な詐欺の事件など、社会的に注目を浴びる事件では、
提訴する側(被害を受けたと訴える原告側)は、
「社会の人々にこの問題を広く知ってもらいたい!
そして、できることなら応援してほしい!」
と思うことがよくあります。
また、マスコミのほうでも、
「この裁判は社会の関心を集めるだろうから、ぜひ報道したい!」
と考えることがあります。
そんなときに、アナウンサーが
「裁判所に訴状を提出しました」
と読み上げるだけでは、インパクトがない。
そこで、
「裁判所に入ってゆく弁護団」
の映像を添えるというわけです。
私も2,3回経験があるのですが、あれはどうやっているかというと、
あらかじめマスコミの方たちと、提訴先の裁判所の、正門の近くで待ち合わせをします。(裁判関係の取材を担当する「司法記者クラブ」の方がマスコミ側の取りまとめ役をされることが多いです。)
そして、弁護士や原告となる方がみんな揃ったら、マスコミの方の合図に従って、
みんなで無言で揃って歩き、裁判所の建物に入ってゆく
のです。
もちろん、「わざわざ撮っている」ふうに見えてはいけないので、
カメラ目線はご法度です。笑ったりしゃべったりもいけません。
ごく自然に、歩かなければなりません。
(しかし、「ごく自然に」が意外と難しい。)
もちろん、そうやって裁判所に入ったあとは(裁判所の建物内は基本的に撮影が認められていません)、そのまま訴状を受け付ける係に行って、訴状を裁判所の担当職員の方に手渡す、という流れになります。
以上、へぇ〜な話でした。
次回は、法廷内でのテレビ撮影について書こうと思います。