自転車事故は警察で人身と物損のどちらにすべきなの?

自転車事故は人身と物損のどちら?

自転車事故に遭って怪我をして、警察で「人身にしますか?物損のままでいいですか?」と聞かれて戸惑う方は少なくありませんが、どちらにすべきなのでしょうか?

自転車の交通事故で怪我をしたのであれば、警察に診断書を提出して人身事故にすべきです

自転車事故における人身事故と物損事故の違いや、警察で人身事故として処理してもらうことのメリットなどについて解説していきます。

人身事故のメリット

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人身事故とは何か

自転車の交通事故における人身事故とは、自転車事故により被害者が怪我をしてしまったり、死亡してしまった事故のことです。

被害者が怪我をしていない事故については、物件事故あるいは物損事故といいます(自転車が壊れてなくても物件事故です)。

自転車事故を警察で人身事故として処理してもらうためには、被害者が怪我をしたことがわかる診断書を提出する必要があります。

被害者が警察に診断書等を提出しなければ、怪我をしていないことを前提に事件を処理することになりますので、被害者が「物損にするか、人身にするか」を選択できることになるのです。

参考ページ

  1. 自転車事故の被害者が警察ですることは?

人身事故と物損事故の違いは?

人身事故

自転車事故で過失により人を怪我させることは犯罪となり、過失の重さによって過失傷害罪重過失傷害罪という罪に問われます。

自転車事故が人身事故として処理されることになると、警察は事故の当事者の事情聴取を行い供述調書を作成したり、実況見分を行って実況見分調書を作成し、検察庁に事件を送ります。

検察庁では、刑事処分として不起訴処分、略式起訴、正式な起訴といった処分が決められることになります。

検察庁では、過失について慎重に検討し、罪名が重過失傷害罪から過失傷害罪に変わることも少なくありません

また、加害者が20歳未満であれば少年事件として扱われ、家庭裁判所に事件が送られることになります。

物損事故

自転車事故で、過失により自転車や所持品が壊れても犯罪ではありませんので、検察庁に事件が送られて刑事処分が行われることはありません。

故意により物を壊すことは犯罪ですが(器物損壊罪)、過失により物を壊してしまうことは犯罪ではないのです。

そのため、物損事故では事情聴取や実況見分は行われなく、供述調書や実況見分調書を入手することはできません。

警察では「物件事故報告書」というものが作成されますので、これを入手することはできます。

実況見分

自転車事故を人身事故にする方法

自転車事故で怪我をしたのに、警察では物損事故として扱われているというときに、人身事故に切り替えるにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは、怪我の治療を受けている病院で、怪我をしたことが書かれた診断書を作成してもらいます。

警察に人身事故にしたいと申告し、診断書を提出すれば、人身事故として扱ってもらえることになります。

人身事故に切り替わったことにより、警察では加害者を被疑者とする捜査が開始されることになり、実況見分や事情聴取が行われることになります。

事故の発生から時間が経過するほど、人身事故への切替えがスムーズにいかない傾向(警察が嫌がる傾向)がありますので、早めに警察に申告した方がよいでしょう。

警察が人身事故にすることに難色を示すようでしたら、きちんと「人身事故にする」という意思を明確にし、それでも難しいようなら弁護士に相談しましょう。

人身事故になっているか確認する方法

警察が被害者の怪我を把握していても、当然に人身事故として扱ってくれているわけではありません。

警察によって、診断書を提出するよう丁寧に説明してくれる場合もあれば、そのまま物損として扱おうとされる場合もあります。

人身事故になっているか確認するためには、警察に人身事故になっているか聞いてみてもいいですし、交通事故証明書を発行してもらえば人身事故と物損事故(物件事故)のどちらになっているか記載されています(交通事故証明書の右下の方に記載欄があります)。

警察に診断書を提出していなければ物損になっていますので、人身事故にしていのなら急いで対応しましょう。

参考ページ

  1. 自転車事故でも交通事故証明書は発行されるの?

人身事故にするべきか

自転車事故で怪我をしたときに、警察で人身事故として扱ってもらう必要はあるのでしょうか?

保険会社は「物損事故のままでも保険金は払われます」と説明しますし、警察で物損事故として扱われていることを理由に慰謝料が減額されることもありません。

しかし、人身事故では警察で実況見分が行われ、実況見分調書が作成されるため、これを事故状況の争いで利用することができるようになるというメリットがあります

実況見分調書には、現場見取図として事故現場の図面があり、加害者が事故状況を説明した内容が記載されていますので、事故態様、過失割合についての主張に大きく役立つのです。

物件事故では、「物件事故報告書」という簡単な内容の書類しか作成されず、詳しい事故状況を知ることはできません。

やはり、診断書の提出、事情聴取などの手間はありますが、怪我をしたのであれば人身事故にしておくべきといえます。

自転車事故の事情聴取、実況見分については、自転車事故の事情聴取や実況見分で気をつけることは?で詳しく解説しています。

自転車事故を人身事故にするデメリット

警察で自転車事故を人身事故にすることによるデメリットはないのでしょうか?

まず、事情聴取のために警察に行く必要があり、手間と時間がかかるというデメリットはあります。

また、自転車の交通事故で相手も怪我をしている場合、こちらが人身事故にすることにより、相手も人身事故にしてまう(呼び水になってしまう)というリスクはあります。

警察から「人身事故にしてしまうと、あなたも罪になるよ」という説明を受け、大怪我をしたのに物損事故にしてしまったという話を聞いたこともあります。

しかし、こちらも被疑者になってしまったとしても、自転車事故を人身事故にするメリットは大きいので、これを気にして物損事故にしてしまうというのは損ではないかと思います。

これまで扱った事件でも、自転車事故を人身事故にして後悔したという話は聞きませんので、「人身事故にするデメリット」というものを意識する必要はないのではないかと思います

まとめ

自転車の交通事故で怪我をしたのであれば、実況見分調書が入手できるようになるなどのメリットがありますので、人身事故にすべきといえます。

警察で人身事故への切替えがスムーズにいかないようであれば、自転車事故に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。