不当解雇を争うのに「時効」はある?

不当解雇を争うのに「時効」はある?

時効(正確には「消滅時効」)とは、時間の経過によって法的な権利が消滅してしまうことです。

たとえば、賃金を請求する権利については、本来支払われるべきときに支払われないまま3年が経過すると、時効により消滅します。(ちなみに、2020年3月以前は「2年」とされていました)。

実は、「不当解雇を争うこと」そのものには、現在の法制度上は、明確な時間的な制限は設けられていません(※後注)。

ただし、不当解雇だとして争うのであれば、解雇されたあと、できるだけ時間をおかず、すみやかに会社に対して「不当解雇を撤回せよ」と抗議したり、裁判・労働審判を起こすなど、何らかのアクションを起こすほうがよいでしょう。

というのは、解雇されたあと、何もしないで長期間が経過してしまったあとでは、いざ「不当解雇である」と主張してみても、裁判所から「それだけ長い間、何もアクションを起こさなかったのは、解雇を有効なものとして受け入れたからでしょう?」と見られてしまうリスクが高くなってしまうからです。

したがって、「不当解雇ではないか?」と思ったら、できるだけ早く弁護士にご相談いただくことをおすすめしたいと思います。

 

※注 なお、解雇後の賃金については、3年の時効があります(労働基準法115条、附則143条3項)。また、不当解雇に対する争い方としてはややイレギュラーな争い方ではありますが、「不当解雇そのものが不法行為(民法709条)に当たる」と主張して損害賠償請求を行う場合には、3年の時効があります(民法724条1号)。

 

執筆者情報

弁護士 友弘 克幸(ともひろ かつゆき)

1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。

大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。

以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。

2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。

2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。

2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。

また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。