不当解雇の解決までの期間は?
解決までの期間は手続きによって異なる
不当解雇の紛争の解決までの期間は、数ヶ月のこともあれば、数年かかることもあります。
解決までの期間がどうなるかは、紛争の内容や会社側の姿勢のほか、「どのような手続きをとるか」によって左右される部分も大きいといえます。
そこで、まず、実際に不当解雇を受けた労働者がどのような手続きを選択できるのか、見ておく必要があります。
不当解雇を争うための手続き
不当解雇を争う手続きとしては、
① 交渉(話し合い)
② 労働審判(ろうどうしんぱん)・・・裁判所の手続き
③ 裁判(訴訟)・・・裁判所の手続き
というのが主な方法になります。
通常は、まずは、①交渉による解決をこころみ、交渉による解決が難しそうであれば、②労働審判か、または③裁判 を起こすことになります。
なお、事案によっては「仮処分」という裁判所の手続きを利用することもありますが、数としてはあまり多くはありません。
解決までに要する期間
解決までの期間は、上記①~③のどの方法により解決するかで異なります。
①交渉で解決する場合
法律上は、特に「交渉」の期間に制限はないのですが、筆者としては、交渉での解決を目指すなら、3ヶ月か、長くてもせいぜい6ヶ月程度が一つの目安だろうと考えています。
というのは、3~6ヶ月も話し合いをして、それでも解決に至らないような場合には、双方ともに「どうしても譲れない点」があるわけで、それ以上時間をかけて話し合いをしても、折り合える可能性は低いと思われるからです。
そのような場合には、交渉はいったん打ち切って、労働審判や裁判など別の手続きをとることを考えるべきでしょう。
②労働審判
労働審判を裁判所に申し立てる場合、申し立てから解決までの期間は3~6ヶ月程度が多いです。
労働審判では原則として「調停」(話し合い)による解決を目指します。
調停の成立が難しい場合には、労働審判委員会(裁判官+2名の労働審判員)が、「労働審判」を出すことになります。
労働審判は、裁判所で開かれる「期日」が原則3回まで(例外として4回まで)と決められているため、裁判に比べて迅速な解決が図れることが多い手続きです。
③裁判(訴訟)
最近は、不当解雇の場合の争い方としては②の労働審判を選ぶケースが多いのですが、事案によっては、労働審判でなく裁判(訴訟)を選ぶ場合もあります。
また、労働審判を申し立てた場合でも、労働審判で紛争が解決できなかった場合(労働審判に対して、当事者のいずれかが異議を申し立てた場合)などは、裁判(訴訟)に移行することになります。
裁判の場合は、労働審判とは異なり、期日の回数に制限はありません。
このため、解決までの期間はどうしても長期化することが多くなります。
もちろんケースバイケースではありますが、一般的には、裁判が始まってから解決するまで、1年~2年程度はかかると考えておく必要があります。
なお、不当解雇に関する裁判(訴訟)の一般的な流れ(地方裁判所で行われる第一審の流れ)は、おおむね次のようになります。
原告(労働者) 訴状を提出
↓
被告(雇い主) 答弁書を提出
↓
その後、1ヶ月~1ヶ月半おきに裁判所の期日が開かれ、原告・被告の双方が、自分の主張をまとめた「準備書面」を提出したり、証拠となる書類(労働契約書、就業規則などなど)を提出します。
↓
双方の主張が出そろったら、裁判官が法廷で関係者(証人・当事者)の証言・供述を聞くための「尋問」を行います。
↓
裁判官が双方の主張と証拠、尋問の内容を検討して「判決書」を書き、それに基づいて判決を言い渡します。
※以上の手続きの流れの中で、紛争解決のため、双方の合意によって裁判を終了させる「和解」が成立することも多くあります。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。