不当解雇された労働者は何を要求できる?
雇用継続と賃金の支払いを要求できる
不当解雇された労働者としては、雇い主に次の2点を要求することができます。
(1)使用者に「雇用が継続している」ことを認めるよう要求できる
(2)解雇後も解雇前と同じように賃金(給料)を支払え、と要求できる
労働契約法16条により無効とされるような解雇、すなわち不当解雇は「無効」になります(くわしくはこちら)。
解雇が無効になるということの法律的な意味は、
使用者が「解雇によって雇用契約は終了した」と主張しても、そのような主張は通らない
ということです。
要するに、法律的には「雇用契約は終了していない」ことになるわけです。
したがって、不当解雇によって職場から追い出され、賃金の支給をストップされた労働者としては、①雇用の継続を前提とした職場復帰、②解雇後の賃金の支払い、を要求することができるわけです。
実際には解決金の支払いで解決することがほとんど
とはいえ、現実には、明らかな不当解雇のケースであっても、労働者が実際に職場復帰するというケースはほとんどありません。
不当解雇された労働者としては会社に対して不信感を持っているケースが多いですし、特にワンマン社長がすべてを取り決めているような小規模な会社であれば、仮に一時的に職場復帰しても、また時間がたてば嫌がらせなどを受けるのではないか、という心配をせざるをえない場合もあるからです。
会社としても、いったん紛争になった以上、なかなか労働者をすんなりと戻す気持ちにはなれないという場合が多いでしょう。
したがって、明らかな不当解雇のケースであっても、ほとんどのケースは、
① 会社が「解決金」などの名目で金銭を支払う
② 労働者は雇用の終了を受け入れる
という形で紛争が解決されているのが実情です。
なお、解決金の金額の「相場」についてはこちらをご参照ください。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。