10/16 交通事故で入院した場合の個室代(特別室使用料)について

Category - 交通事故 作成者:髙橋 裕也

 交通事故による怪我で入院して個室を使用した場合,損害賠償請求において個室代が損害として認められるかが問題となります。

 大阪地裁の考え方では,医師の指示があった場合,症状が重篤であった場合,空室がなかった場合等の特別の事情がある場合に限り,相当な期間につき損害として認められるものとされています。

 以前に交通事故についての研修を受けたときに,講師をされていた弁護士が「個室代は個室使用について医療上の必要性がなければ損害として認めらない。しかし,個室使用について医療上の必要性があるのなら,病院は患者に個室代を請求できないことになっている(個室代の請求について厚労省の通知があるため)。つまり,個室使用について医療上の必要性がある場合,被害者は病院に個室代を支払う必要がないのだから,個室代が損害として認められることはない。したがって,交通事故で個室代が損害として認められる場合など無いはずである。」と話していたように記憶していますが,裁判では認められにくい考え方ではないかと思います。

 自保ジャーナル№1903(2013年10月10日号)で紹介されている大阪地裁平成25年3月8日判決は,個室代が損害として認められるかが争点の一つだったのですが,個室使用の必要性はあるものの,医療上の必要性ではないという特殊性があったため,裁判所は以下のとおり個室代の一部を損害として認めるという判断をしました。

 

「同センターからの要個室証明書には,「以前よりパニック症候群により精神科による加療を受けていた。また,それに伴い,周辺に危害を与えることもしばしばあったとのことで,他患者の安全を守るため,また本人の精神的安定のため必要であった」との記載があることからすれば,他患者の安全のために個室が必要であったと認められる。もっとも,当該事情は,医療的なものではなく,原告一郎の個人的事情であることなどから,個室料についてはその5割を相当と認める」

 

 個室代につきましては,入院期間が長期間であれば,それなりに高額になってしまうものですので,注意が必要といえるでしょう。